◆悲惨な状況を変える

私は、皆さんと同じように鍼灸マッサージ師の資格
を取り、最初は柔道整復院で働き、ついで独立開業し
た経験があります。その後、会社を設立し、現在に至
っています。

独立開業して年商1 ,700万円、まず成功といえる業
績をあげることができました。治療師一人での営業と
しては、満足のいく成功であったと言えます。しかし、
食事をとる暇のないほど患者の対応に追われ、施術だ
けに埋没する日々に、体力的な限界がいつか訪れるこ
とを悟るとともに「これで満足してよいものか」とい
う思いが生じました。

そして、「鍼灸マッサージ師の株式会社を作ろう」と一念発起し、

現・株式会社アメニティーサービスを
設立しましたo 2001年には、「日本経済新聞」でも取
り上げられるまでになったのです。

私は、個人事業レベルでは一つの成功をおさめるこ
とができました。

しかし、ここ14年間、いつも心に引っかかるのは、

鍼灸マッサージ師の無自覚から来る悲惨な現状です｡

それをなんとか変えたいと思うのです。

悲惨な状況……、実際に独立開業したのに、日々生
活するのが精一杯、一国一城の主になりながら、収入
は高卒の初任給より少ない、そんな鍼灸マッサージ師
はたくさんいます。

鍼灸マッサージ師の資格を取り、先生になったはず
が、個人開業の鍼灸接骨院と整形外科でアシスタント
のように扱われる。毎夜、サウナで酔客のマッサージ
をする。もはや、そこには「先生」のとしてプライド
はありません。

苦労は私だけで十分です。これからの人には、もっ
と高い次元からスタートしていただきたいという願い
があります。「高い次元」というのは、職域的にはア
シスタントのような“おまけ”のようなものではない
ということです。最低限、治療者としてのプライドの
ある次元という意味です。

そのためには、心のリハビリが必要です。「自分に
はリハビリなんか必要ないよ」、そうお考えになって
いる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、本当にそうでしょうか。

鍼灸マッサージ師は、個人開業をすれば成功すると
いう「神話」におどらされ、本人もそれを目指すこと
しか考えず、結果的に周囲から利用される状況に陥っ
ていないでしょうか。それで治療者としてのプライド
を保ち続けられるのでしょうか。
こういった内外の相乗作用で生みだされる現状は、
鍼灸マッサージ師を弱い立場に置き、いつしかプライ
ドをも奪ってしまいます。

それを私は“無自覚”と指摘するのです。本当の真
価が見極められない、受け入れられない、それどころ
か知ることもない状態であれば、心の病を持ってしま
っているに等しいと感じます。少し言葉が過ぎるかも
しれませんが、「鍼灸マッサージ師としての心の病」
と私が言うのは、現状の“固定観念”ということです。
もっと、平たい言い方をすれば、「どうすることも
できないさ」「現実は、こんなものさ｣、こんな言い訳
を自分自身にしている状態なのです。

まだ、悩みあぐねている方であれば、「どうしてよ
いかわからない｣、こう言うかもしれません。